第一章 支配者クロノスの栄光

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 三兄弟は地母神ガイアに言われたとおりに地下の奥深くへの道を下っていた。日の光も届かない地の底の牢獄、そこにカムペーはいた。 三兄弟は手に持った松明でカムペーを照らす。そのカムペー、美しい女であった。だが、下半身は蛇、漆黒の翼、頭には蠍の尾の怪物。 生かしてはおけないと三兄弟は武器を手に取った。 「誰だい? ウラノスかい? もうあいつら食べていいかい? もうお腹がペコペコだよ」 カムペーは蠍の尾をブンブンと振り回した。尾の先端より毒液が飛沫舞い踊る、毒液の付いた地面はシューと音を立てながらゆっくりと溶けていく。 「で、出直そうよ……」と、ハデスが弱気の虫を出した。しかし、ポセイドンは前へと出て、槍を構えた。 「俺たちは神だ。毒ぐらいで怖れてどうする」 「駄目だよ! 僕ら神は死ねないんだから毒なんて食らったら永遠に毒の痛みで苦しむことになるよ!」 「これは駄目だな…… 未知の毒は解毒の方法も分からんしな」 ポセイドンも弱気の虫を出した。二人が弱気の虫を出している間、ゼウスはどこかに姿を消していた。 「あれ? ゼウスは?」 ゼウスは暗がりの壁を登り、カムペーの背後の壁に捕まっていた。そして、そこから大鷲が両翼を広げて飛ぶようにふわりと飛び降りた。その右手にはアダマスの鎌が握られている。地につくまでのほんの短い間にゼウスはアダマスの鎌を素早く振り、カムペーの頭の蠍の尾と、背中に不気味に黒光りする漆黒の翼を無慈悲に切り落とした。 断末魔の悲鳴が地下に響き渡る。いつ食べられるのだろうと不安がっていた牢の奥にいるキュクロプスにヘカトンケイルもそれには流石に驚く。 カムペーは地に足をつき鎌を構えるゼウスを修羅の形相で睨みつける。 「よ、よくもあたしの頭と羽根を! 絶対に許さないよ! 両手両足の骨を粉々に砕いて泣き喚くお前をそのまま丸呑みにしてジワジワと溶かしてやるからね!」 「兄弟! 手ェ貸せ!」 その声に応え、ポセイドンとハデスが岩の物陰から現れた。 「あいつの尻尾の部位破壊は終わった! 後は下半身の蛇の足にだけ気をつけるんだ!」 「おう!」 「承知!」
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