第一章 支配者クロノスの栄光

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 三兄弟の連携によりカムペーは倒された。ゼウスが積極的に剣でカムペーを切り裂き、ポセイドンはゼウスの後ろの中距離(ミドルレンジ)より槍を突きジワジワとカムペーの体力を奪っていき、ハデスは遠距離(ロングレンジ)より岩陰に隠れつつ矢を放つ、その(やじり)にはカムペーの蠍の尾より垂れ流された毒液を付着させ、カムペーにその矢を打ち込むことにより毒状態にし、動きを鈍重化させたところにゼウスの止めの斬撃がカムペーの首筋を切り裂いたのだった。 こうして、三人のキュクロプスとヘカトンケイルは長い地の底の虜の身から脱したのである。異形の巨人達は三兄弟に心からの称賛の言葉を送る。 「ありがとうございます! 毎日が暗闇の中であの怪物に食べられるのを待つだけだった我々が助かるとは!」 「私達、兄弟六人は皆様方に従い尽くします」 ゼウスは現在の事情を話した。六人を地に追いやった父親は今やいないも同然だということ、助けてくれるはずの貴方方の兄が今や我々の敵となりこの母なる大地を壊し汚していることなどと簡単に纏めたのだった。 「そうですか…… これならば我々兄弟の力を使いください」 ヘカトンケイルが前に出た。パフォーマンスと言わんばかりに辺りに転がっていた岩々を持ち上げる。 「我々には百の手があります。この手であれば五十個の岩を持ち上げることが出来ます」 「なるほど、百五十の岩が一斉に飛んでくるのはいかにティターン神族であろうと防ぐのは難しいな」 「我々キュクロプス三兄弟は優れた鍛冶技術を持っております。貴方方三兄弟に合わせた武器をお造りいたしましょう。まず、弓をお使いの方」 「え、僕?」と、ハデスは自分を指差した。 「後方に備えて控えめに戦う姿は隠れて戦う方が相応しいとお見受けしました」 褒められているのか貶されるのだろうか…… ハデスは少し複雑な気分になった。 ちなみにキュクロプスは三兄弟の戦いを直接目で見ていたわけではないのだが、剣を振る音、槍が空を切る音、弓の風切り音のみでカムペーとどのように戦ったかを知ったのである。 「この兜をお使い下さい。この兜は被った者の姿を完全に消す兜。ただし、発する音や気配までは消せないので息を潜めての隠密行動にお使い下さい」 「これは素晴らしい」
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