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オリュンポス山に戻って早々に会議が行われた。普段は理由も分からない祝宴が行われている大神の間も、この有事ともなれば立派な会議場である。
「なぁゼウス、少し気になっているんだけど」と、ハデス。
「何がだ?」
「あいつら、武器を大量に持ってるけど…… どこから仕入れてくるんだ? 俺たちは神だけど無から有を生み出すことは出来ないぞ」
すると、テーブルの隅で申し訳無さそうに座っていたヘパイストスが手を上げた。
「実は…… 戦争が始まる前からティターン神族に武器作るのを頼まれていた」
ヘパイストスは巨神戦争勃発前よりティターン神族に武器の作成を依頼されていたのである。本人としては頼まれていたからやっただけであって悪意は一切ない。
すると、アレスが円卓をバンと叩きつけながら立ち上がった。
「ふざけんなよ! クソ兄貴がクソティターン神族に武器流してるからこんなに戦争が長引いてるんじゃねぇか!」
ヘパイストスはアレスの怒号に気圧され、しゅるしゅると小さくなった。アレスの口撃は更に続く。
ちなみにだが、戦争が長引いている理由は不死同士の神々の戦い故にお互いに戦力が減らないからである。アレスの言うことは全くの見当違いであった。
「もしかして、母さんに捨てられた恨みからあいつらに武器流していたんじゃねぇだろうなぁ? あ? クソ兄貴から言わせればオリュンポス神族が没落すれば母さんも没落するから万々歳だからなぁ!?」
ちなみに、ここにいる神々の防具はヘパイストスが作ったものである。アレスが使う武器防具戦車もヘパイストスが渋々ながらに作ったものではあるが、品質は他の神々の武器防具戦車と同じく最高のものである。ここまでしているのに弟になぜ罵声を浴びせられなければいけないのだろうか。
ヘパイストスは目頭を熱くし、涙を堪えるのであった。そこに助け舟を出したのはヘパイストスの防具は使わずに自らの防具の「手入れ」だけをしてもらっている女神だった。女神はスッと立ち上がった。
「黙りなさい。アレス? ヘパイストスに対する侮辱はこのアテナが許しません」
「何だよアテナ…… うぜぇな」
「ヘパイストスがティターン神族に武器を作っていたのはこの戦争が始まる前。知らなかったのでは仕方がないではありませんか」
「でもよぉ……」
「貴方が今着ている鎧をご覧なさい。ヘパイストスの鎧ですよ。ここまで良い鎧を作ってもらっておいて罵声を浴びせるとは恩知らずですね。しかも我々の没落を願うなどと言った被害妄想を……」
ヘパイストスの造った鎧は岩をも弾く。もし、アレスがこの鎧を着ていなかったら骨の数本はヘシ折れ、今頃はベッドの上で自己修復の真っ最中だっただろう。
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