Prologue 天地創生

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 大地(ガイア)を夜の闇が包む。夜そのものである女神、ニュクスと共にウラノスが星々を散りばめた外套(マント)を翻し大地(ガイア)の元へと向かう。夜になれば天空の星々は瞬き輝く、ウラノスがガイアと交わるためには夜にならなければならない、つまり、ウラノスがガイアと交わるためにはニュクスを伴わければならないということである。  ニュクスの方からすれば、自分の姉妹が甥っ子(義兄弟)と交わるのを見せつけられるためにたまったものではない。この後に起こる悲劇も含め、神のネガティブな要素を見せつけられたニュクスは単独でネガティブな概念の神々を生み出すのだが、それはもう少し後の話になる。  今日も今日とて、ウラノスはガイアに覆いかぶさる。それを見たくもないのに見つめるはニュクス、何が面白くて「交わり」を目に焼き付けなければならないのだろうかと陰鬱な気分になる。 今日はそれ以外にも虎視眈々と父母の交わりを眺める男がいた。野心に燃える男神、クロノスである。クロノスはアダマスの鎌をウラノスに振りかぶろうと機を狙っていた、神は不老不死である、殺すことは出来ない。 ならばどうするか、男の象徴(シムボル)を叩き切って最大の屈辱、つまり死ぬにも等しい屈辱を与えてやろうと言うのがクロノスの考えであった。  ウラノスはガイアを覆った、重なる唇、ねっとりと絡み合う腕と指、両親が交わる姿を見るのは息子として大変な苦痛である。ウーレアーが生み出しし山々を物陰にして隠れていたクロノスは奥歯を噛み締め何とも言えない精神的苦痛に耐えていた。 前戯が進む内にウラノスの男の象徴(シムボル)はむくりむくりと山のように隆起してきた。クロノスはそれを見て目を光らせた。 「チャンス!」 クロノスはアダマスの鎌を振りかぶり、ウラノスとガイアの間に屹立する男の象徴(シムボル)に向かって疾走(はし)った。遂に来たか、我が息子よ。ガイアは腰を引き、切りやすいように位置どった。クロノスは思い切りアダマスの鎌を振りかぶり、屹立するウラノスの男の象徴(シムボル)に振り下ろした。 鈍い金属音が大地に響き渡る。クロノスの男の象徴(シムボル)は哀れ弧を描き、迷惑にも血飛沫を振り回し、飛び散らせながら空の彼方へと消えていった。 「ク、クロノス! 貴様なにを!」 「……」 クロノスはその問いに答えない。答えたのはガイアだった。 「自分の息子を蔑ろにした罪は自分のムスコで償いなさい」 ガイアは口角を上げて大地へと横たわる。ウラノスは蛇口の無い蛇口のように血を吹き出す股間を押さえて咽び泣く。 「ああ、嫌だよ…… 俺のが…… なくなっちまった…… これからどうやって子作りをすればいいんだ」 「小便専用でいいじゃない」と、ガイアは罵り嘲笑(わら)いながら宣った。 「それすら無いから言っている!」 「傷が塞がれば出来るでしょ? 傷口が塞がれば出るようになるでしょ?」
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