Prologue 天地創生

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 クロノスは父ウラノスを倒したことで地上の支配者となった。他の兄弟姉妹達の前でそれを高らかに宣言する。 「私は父から地上の実権を奪った! 何もしなかった兄上姉上達には何も言う資格はない! 文句はありませんね!」 五人の兄と六人の姉は「末っ子のくせに」と不満を懐きつつも、何もしてない身故にそれを承服した。その宣言中にガイアが割り込む。 「クロノス! 今すぐタルタロスの奥に行き弟達を助けておくれ!」 すると、クロノスは首を横に振った。 「何のことですか。私には地上を統治する仕事があるのです。忙しいのです」 「お前! 約束したじゃないか! 約束を反故にする気かい!」 「弟を助けると約束はしていません。私が約束したのはウラノスを倒すことだけです」 「この恩知らずが!」 キュクロプスとヘカトンケイルの救助はなされなかった。ガイアは地の底で苦しむ子らを憂いながらも他の子、ポントスと子を成すのであった。 ウラノスはそれを寂しそうな目で見つめることしか出来なかった。 ウラノスとガイアだが、こんなことがあったにも関わらずに夫婦関係を未来永劫続けている。  ガイアはそれからエウリュビア(海の女神)ケト(海の怪物の女神)ポルキュス(海の神)ネーレウス(穏やかな海の神)タウマス(海の驚異の神)の五柱の海に関する神を生み出した。  ケトとポルキュスはお互いが海の神ということもあり、すぐに意気投合し、交わった。二人の第一子は三つ子のグライアイ三姉妹。生まれた時から老婆の姿をしており、三人合わせて一つの目と一本の歯しか持ちわせていない異形の神であった。グライアイと言うのは、見たまま老婆と言う意味である。それぞれペムプレート(意地悪)エヌオー(戦闘を好む)ディノー(恐怖)と言う名前がついており、その概念であるのだが、三柱で一つの目と一本の歯しか持ちわせていないために人畜無害であるとされている。 「次こそは美しい子を生みましょう」 ケトとポルキュスは再び交わり、子を成した。次に生まれてきたのはゴルゴン三姉妹であった。この三姉妹、ステンノ(強い女)エウリュアレ(遠くに飛ぶ女)メデューサ(支配する女)の三人からなる。ステンノとエウリュアレは醜女で、髪の毛を中心に全身に蛇が絡みついており、猪のように鋭い牙を持ち、背には黄金の翼が輝き、腕は青銅の鉤爪がついたものであった。末妹のメデューサだけは異形の軛を外れ、豊かな漆黒の黒髪と、絶世の美神そのものであった。ただ、上の姉妹二人は不老不死で、メデューサだけは不老不死ではなかった。 この二組の三姉妹はお互いにお互いを想い、助け合う大変仲睦まじい女達であった。この三姉妹達には幸せになってほしいものである。
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