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Prologue 天地創生
原初の昔、世界は無秩序に概念が渦巻き乱れる大口の中にあった。
どれほど時が経過した…… いや、経過と言う概念すらないかもしれない。いつかも分からないある日、大口の中より一つの真白き無垢なる翼を持つ美しい少年の形をした概念が飛び出した。
その概念の名は「エロス」性愛、つまり男女の交わりの概念を司る男神である。
エロスが無ければ生命は生まれない。神の男女の交わりは勿論、鳥虫獣の雄雌の交わり、後に生まれし人の男女の交わり、果てには植物の雌しべ雄しべの受粉、これら全てはエロスと言う概念があるからこそ存在出来ている。
つまり、エロス無くして生命は存在出来ないのである。
次に…… いや、次にと言う言葉を使うのは相応しくない。エロスと同時に大口から飛び出したかもしれないし、先んじて存在たかもしれない概念がいた。その概念は不毛の大地の形となりその場に鎮座した。
その概念の名は「タルタロス」暗黒界、つまり光も届かぬ大地そのものの男神である。
そして、タルタロスの上に覆い被さり、蓋をするようにもう一つの概念が現れた。
その概念の名は「ガイア」大地、つまり地球の大地そのものを司る女神である。
こうして、我々が両の足を根に下ろす母なる大地である地球が出来た。だが、現状ではタルタロスにガイアと言う上蓋を付けただけの不毛の大地。そこには光も闇もない。
すると、不毛の大地は夜の闇に包まれた。大口より飛び出した男女の神が大地を包んだのである。
それらの概念の名は「ニュクス」「エレボス」夜と闇、つまり二柱合わせて夜の闇の概念を司る夫婦神である。その夫婦神はエロスに促され二人の子を成した。夜と闇が合わさり生まれた神は「光」の概念だった。
その概念の名は「アイテール」と「ヘメラ」、天上にまで届く澄明たる光は大地を照らし、昼となる。
大地を夜の闇(エレボスとニュクス)と昼の光(アイテールとヘメラ)が巡り回ることで
昼と夜の概念が生まれたのである。
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