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いきなりすぎます
「……ちょっと、え、は? え、え?」
ようやく発せた言葉も、まだきちんとした意味を成せず。
「母さん何言ってんの?」
栄一郎が怪訝そうな顔になるが誰のせいだと思っているのか。何言ってんの、はこっちの台詞なんですけど。
他の皆はたった今聞いたことの衝撃が強すぎたのか、皆固まっている。わたしはまだマシな方だ。嬉しくもなんともないが、こういったことは栄一郎には起こりうることだと……。いや、さすがにこれはない。
わたしは爆弾を落としているのに平然としている栄一郎が信じられず、いやもしかしたら聞き間違いかもしれないと思い、再度聞いてみた。
「栄一郎、聞き間違いじゃなかったら、ケッコン、とかなんとか聞こえた気がするんだけど……」
「聞き間違いじゃないよ」
聞き間違いであってほしかった。
「あんた、何考えてんの!?」
「母さん声おっきいよ!」
「これが大声出さずにいられるか!!」
栄一郎が耳を塞ぐ。
全く信じられない。だって普通思わないじゃない。普段どおりに家に帰って普段どおりにわたしが作ったご飯を食べてる息子が、まさかすでに結婚してたなんて……。
でもとりあえず気になるのは。
「……お相手の方は?」
「初乃は、後で呼ぶよ」
「いや、何で一緒じゃないのよ」
「家族会議にいきなり連れてきたらびっくりするだろ?」
「今すでにびっくりしてるから意味ないし、普通は一緒にするもんでしょ。というか、普通は結婚するなら家族に挨拶とか、それでなくても報告くらいあるもんじゃないの?」
「今報告したじゃん」
「事後報告してどうすんのよ!!」
はあ、もう頭痛い……。わたしが頭を押さえていると、いつの間にかダメージから立ち直っていたらしい旦那様が頭を優しく撫でてくれた。ああ、癒し……。
「まあまあ、しょうがないじゃん。済んじゃったもんは」
「あんたねえ……」
昔っからトラブルばっかり起こしてくれてたけど、今度という今度はトラブルどころの騒ぎではない。
「まあ、しょうがないわよ母さん。済んじゃったもんは」
「うん、済んじゃったもんは」
いつの間にか旦那様同様に立ち直っていた夏子と咲美まで同調する。ダメージ大きかったわりに、わたしよりも事態を受け入れるのが早い。全くうちの子供たちときたら……。
「はあ……。あなたはどう思う?」
わたしはさっきから頭を優しく撫でてくれている旦那様をちらっと見る。まあ、この優しい旦那様のことだから聞かなくても分かるけど。
「うん。まあ確かにびっくりしたけど、しょうがないんじゃないかな。済んじゃったものは」
ふう、やっぱりそうなるか。
「そうそう、早いか遅いかの違いだって」
「あんたが言うなったら……」
全く……。でもまあ。
「……しょうがないわよね。済んじゃったもんは」
「そうそう。……あ、それからさ。今日から初乃もここで住むことになったから」
はい?
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