第一話 青い空と青い海・灰色の空と黒い海

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第一話 青い空と青い海・灰色の空と黒い海

「ねぇ、リオス。知っている? 本当の空ってね、青色なんだって。本当の海ってね、青色なんだって。いつか本当の空と海をみにいこうね。約束ね」とリオスは雲のように真っ白な肌に真っ白な長い髪、空のような瞳の少女と指切りをする。  僕が小さい頃からよくみる夢。僕のいる世界の空も海も青色なのに少女がいう『本当の空と海』とはなんのことなのか……いつも不思議な気持ちになる。  朝の七時になると窓が開き、カーンカーンカーンという鐘の音が街中に鳴り響く。鳥たちは鐘の音に合わせ歌いだす。フォスの光が朝色に変化し、街中を明るく照らす。鐘の音が鳴り終わるとベッド横のサイドテーブルには光水が現れる。リオスは光水を飲み終え、ベッドから立ち上がりブレスレットを握る。するとブレスレットが光り全身が光りに包まれる。それが終わるとテーブルの上にブロック状の食べ物とスパウトパウチに入った飲料が現れる。これが毎朝のルーティーンである。朝の八時に学校へ向かう乗り物、ナーイアス(ウミウシに似たイキモノ)がやってくるのでシオンは家を出る。  今は 天王暦(ウーラノス)212年。  地上は汚染され、温暖化になり人が住むことができない世界となった。汚染された地上に再び住むためにと木々を植え森林化し、地上は森と海の世界に戻す計画が行われている。そして、今は地上に住む者はいない。人々は空中都市『クルヴィ』で暮らすようになったからである。クルヴィは半球体型の建造物で青い空と青い海に囲まれ、建物と建物の間には川が流れている。フォスと呼ばれる光は一日を管理し、色を変化させながらクルヴィを照らす。フォスの光は住民たちが生活していくためのエネルギーでもある。  クルヴィには階級があり、能力で住む場所が決められている。世界を取り仕切っている世界政府という組織がいう「平等で平和」の世界がこれだそうだ。ただ階級の違うクルヴィには申請をすれば簡単に行き来ができる。しかし、別のクルヴィへの干渉や何かしらの影響を与えること、情報の持ち出しなどは禁じられ、もしそれを犯してしまった場合は重罰が課せられる。そしてヒトもヒト以外の動植物もつくられた物も全てに印が押され管理されている、それがここクルヴィという世界である。  人は母のお腹から生まれることはなくなり、父母の遺伝子を取り出して子供がつくられる。ベースは父母の遺伝子を使うが、ほとんどの子供が遺伝子操作され何かしらの特殊能力や特技を保有しており、誰もが生まれたときに自分専用のイキモノを所持するのがこの世界の常識である。
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