月の下のステージ

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3学期は、担任からの衝撃的な話で始まった クラスメイトの1人が病気で入院中だと言う 骨肉腫とかいう骨の癌で、既に手術をして治療しているとのことだ 何が驚いたかって、そのクラスメイトというのが、2学期の終わりにあの公園で踊っていた子だったのだ 冬休みに入ってすぐに入院して治療を始めたらしいから、あの後すぐに入院したのだろう ホームルームを終え担任が出て行くと、何人かの女子達が話し出した 「あんなにバレエの試験目指して頑張ってたのに…」 「どんなに具合悪くてもバレエのお稽古休まないで頑張ってたのに…」 とか、どうやらバレエに相当力を入れていたようだ そんな中、ある女子が泣きながら信じられない事を言い出した 「私の家、お母さん同士も仲がいいから聞いちゃったんだけど……右足…切っちゃったんだって!だからもう、元気になっても……」 そう言って机に突っ伏して泣き出した ………… 切っちゃった? 足を? 信じられない あんなに綺麗に踊っていたのに その日は帰りまで教室の中がざわついていた 俺自身も何も頭に入ってこなかった 始業式を終え家に帰りベッドへとダイブした 彼女のことは何も知らない バレエを習ってたのも今日初めて知った 挨拶位しかしてなかったが、よく笑ってた印象はある よく笑って…………あ! 思い出した! 体育祭の時、たしか女子が1人転んで怪我をしてた それが彼女だったはずだ 何処でどんな状況で転んだのか、ジャージに穴が空き、足からも、腕からも、けっこうな血が出て、顔も怪我をしたと、女子達が青ざめながら話していた 当の本人は、翌日少し歩きずらそうにしながらも、頬に大きな絆創膏を貼り、いつも通りの笑顔で登校して皆を驚かせていた 俺にとって、そこまで関わる人間でもないし、たいして気にも留めてなかったのだ でも今思い返すと、あれから時々欠席することがあったように思う 一体どの時点で病名を告げられたのだろう どの時点で足を切ると決めたのだろう 俺と同じ歳でそれを決断しなきゃならないだなんて しかもバレエという夢があったのに 彼女はどうやって自分を保っているのだろう 翌日登校すると、皆で応援メッセージを書いた色紙と千羽鶴を折らないかという話が出ていた 千羽鶴を折るのはかまわない 何羽でも折ろう しかし、ほとんど関わりのなかった人に、しかもこんな状況で、一体どんなメッセージを書けばいいのか… 顔見知り程度の付き合いなんだから、向こうだって俺のメッセージに期待なんかしないだろう 応援してます…頑張って下さい… そんなことを書けばいい けれども、あの日の光景が脳裏に浮かぶ あの人に一体何を頑張れと言うのか? 色紙が回ってきた あんまり時間かけたら怪しまれるだろ さっさと書け!今思った事そのまま書け! 月に照らされた公園は とても綺麗でした
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