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月の光の中で踊る彼女は
超絶綺麗だった
幼稚園から大学までエスカレーター式
高校2年で大学受験を一切考えず
問題になるようないじめや警察沙汰とは無縁
浅く広く必要な友好関係を築き
可もなく不可もなく
毎日は大体同じ事の繰り返しだ
「ちょっと走ってくるから!」
玄関から一声かけて外へ出る
12月ともなるとだいぶ冷えている
父に勧められて始めたジョギングは、予想外に1日の楽しみになっている
時間も道も自分で考え決める
たまに迷ったり、行き止まりだったりするが、知らない道を走り、見たことのなかった景色を見るのは、けっこう楽しい
街灯の少ない通りもずいぶん明るいと思ったら、空には月が完璧な丸を作り上げていた
こうやって走らなければ、月を見上げるなんてこと、しなかったろうな
だいぶ体が暖まってきた
明日からは冬休みだし、もう少し先まで走るか
けっこう来たな
そろそろ戻るとするか
どの道を通って戻ろうかと思っていると、目の前に公園が見えてきた
よし、この公園をぐるっと回って帰ろう
そこそこ大きな公園は、ぐるりと木で囲まれていた
ようやく広場が見えてきた時、それを見た
人が1人で何か動いている
少しの動きじゃない
回ったり、跳び跳ねたりしているようだ
走るのをやめて、ゆっくり公園の外を歩きながら見る
そして、息をのんだ
踊っていたのだ
よく知らないけど、おそらくバレエのような踊りだ
誰も居ない、無音の中で、その人は夢中で踊っていた
木に囲まれた広場だけが照らされているようで、まるでその人の為に今日の満月が用意されたかのようだった
時々吐く白い息さえも演出のようだった
バレエなんて知らない俺にでも伝わってくるものがある
凄い
としか表現出来ない自分の語彙力が虚しい
時々月明かりに照らされる顔を見てはっとする
まずい!クラスメイトだ!
一気に現実に戻り、そそくさと元来た道を走り出した
挨拶程度しか付き合いのない人間に、あんなプライベート見られたいわけがない
気付かれなくて良かった
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