8月9日

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8月9日

8月9日    今日も朝から晩まで塾で勉強するだけの一日だった。  それ以外に書くこともないから、昨日見つけた、あるなぞの物体について、書こうと思う。  塾からの帰り道、あたりは真っ暗で、満月の光 をたよりに歩いていた。  その途中で、いつもは見向きもしない、ただ通り過ぎるだけの近所の団地のゴミステーションを通り過ぎる直前で、積まれたゴミ袋の上から、何かがぽろりと目の前にころげ落ちてきた。  ぼくはそれを拾いあげた。  見たことがない、なぞの真っ白な物体が捨てられていた。  形は、サイコロのようなきれいな正方形で、大きさは両の手のひらにのるくらい。思ったよりも軽くて、手にしたときには発泡スチロールかなと思ったくらいだ。だけど、その正方形は、宝石のような、きれいな大理石のような光たくがあって、ずっと見ていると、この正方形の中に吸いこまれそうな気持ちになった。  コンコンとたたいてみたり、ボールのように地面に転がしてみたりした。だけど、何も起こらなかった。  少し変わった見た目をしているけど、ただのゴミだなと思ったぼくは、その正方形をゴミステーションにもどそうとした。その時だった。 「やめて」という声が聞こえたような気がした。  周りを見回してもだれもしない。  まさかと思いながら、今度は、用水路に向かって、この物体を投げ捨てようとした。  するとまた、やめてという言葉がきこえた。今度ははっきりと聞こえた。    この真っ白な物体は、いったい何なのだろう?     最先端の何かの装置? 未発見の生き物? もしかして、地球外生命体? もっとこの物体について知りたいと思った。  ぼくは、この物体をリュックの中にしまい、家に持ち帰ることにした。  算数では未知の値を、Xを使って表すことを学校で習った。  それにちなんで、ぼくはこの謎の正方形を、「X(エックス)」と名付けることにした。
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