8月16日

1/1
前へ
/12ページ
次へ

8月16日

8月16日  模試の結果がでて以来、お母さんのきげんがとても悪い。  塾から帰ると、お母さんは、滑り止めの中学校の過去問をぼくにやらせて、間違えるたびに、「なんでこんなこともできないの?」と言って、ぼくの頭を何回もたたいた。  最近、ぼくはつらくて、机の引き出しからあれを取り出す。真っ白な正方形、Xだ。  模試の結果が出た日、お母さんに怒られた後、ぼくはひとり言のように、お母さんへの不満をXにむかって言った。  不思議なことに、しゃべっていると、すっと心が落ちついた。  それからは、ぼくはつらいことがあると、Xにしゃべりかけていた。  すると、Xに変化がでてきた。Xはただの正方形で、表面は真っ白で、何の模様もなかった。だけど最近、とても小さな青色のだ円形のような模様が、ぽつぽつとできていた。よく観察してみると、その穴は、植物の気こうのような形で、口のようにも耳のようにも思えた。 「がんばれ」  あるとき、Xにしゃべりかけ続けていると、急にそんな言葉が聞こえた。  言葉は、頭の中に直接聞こえてくるような感覚だった。  そういえば、Xを見つけた時も、「やめて」という言葉が、聞こえた。  やっぱり、Xが言葉をはっしているのかもしれない。  おもしろいことに、ぼくが、何かをつぶやくたびに、この模様の数が増えていった。今では、一面につき十個くらいあって、数えてみると、合計で六十六個あった。  そして、その数が増えるたびに、ぼくをはげましてくれるような言葉が、たくさん聞こえるようになってきた。  もしかしたら、Xは、ぼくの言葉を理解できているのかもしれない。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加