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8月16日
8月16日
模試の結果がでて以来、お母さんのきげんがとても悪い。
塾から帰ると、お母さんは、滑り止めの中学校の過去問をぼくにやらせて、間違えるたびに、「なんでこんなこともできないの?」と言って、ぼくの頭を何回もたたいた。
最近、ぼくはつらくて、机の引き出しからあれを取り出す。真っ白な正方形、Xだ。
模試の結果が出た日、お母さんに怒られた後、ぼくはひとり言のように、お母さんへの不満をXにむかって言った。
不思議なことに、しゃべっていると、すっと心が落ちついた。
それからは、ぼくはつらいことがあると、Xにしゃべりかけていた。
すると、Xに変化がでてきた。Xはただの正方形で、表面は真っ白で、何の模様もなかった。だけど最近、とても小さな青色のだ円形のような模様が、ぽつぽつとできていた。よく観察してみると、その穴は、植物の気こうのような形で、口のようにも耳のようにも思えた。
「がんばれ」
あるとき、Xにしゃべりかけ続けていると、急にそんな言葉が聞こえた。
言葉は、頭の中に直接聞こえてくるような感覚だった。
そういえば、Xを見つけた時も、「やめて」という言葉が、聞こえた。
やっぱり、Xが言葉をはっしているのかもしれない。
おもしろいことに、ぼくが、何かをつぶやくたびに、この模様の数が増えていった。今では、一面につき十個くらいあって、数えてみると、合計で六十六個あった。
そして、その数が増えるたびに、ぼくをはげましてくれるような言葉が、たくさん聞こえるようになってきた。
もしかしたら、Xは、ぼくの言葉を理解できているのかもしれない。
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