8月20日

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8月20日

8月20日  家で勉強をしていると、インターホンが鳴った。お母さんは買い物で家にいなかったので、とびらをあけにいくと、目の前にはお父さんがいた。  約二年ぶりのお父さんだ。  ぼくは驚いたけど、うれしくなって、お父さんに抱きついた。お父さんが帰ってきたと思ったからだ。 「お父さん、やっともどってきてくれたの?」  ぼくがたずねると、お父さんは困ったような顔をした。  お父さんの後ろに、かっこいい白い車がとまっていて、窓から、赤ちゃんを抱いた、お母さんよりひとまわり若い女の人が、助手席に座っているのが見えた。  お父さんは、ぼくが見ていたことに気づいたのか、「彼女は、私の新しいパートナーだよ」と言った。  ぼくには、すぐには言っている意味が理解できなかった。だって、お父さんのパートナーは、お母さんのはずだ。なんで、あの若い女の人に変わっているんだろう。  でも、次にお父さんが言った言葉は、もっと信じられなかった。 「彼女に抱えられている赤ちゃんは、青斗の妹だよ」  お父さんは、今どこにいて、どんな生活をしているかなど、話した後、お父さんたちといっしょに住まないかと言ってきた。  言われてすぐは、まったく内容が入ってこなかったけど、ちょっとして、やっとお父さんの今についてが理解できた。  お父さんは家を出て行ってから、あの若い女の人と出会って、新しい家族をつくった。ぼくとお母さんをこの家において、いや、ぼくとお母さんを捨てたのだ。  そして、今、捨てたぼくを取りもどしにやってきた。  ぼくは、頭の中がひどく混乱して、気持ちの整理ができなくなった。お父さんに捨てられたと思うと、もうこれ以上お父さんの近くにいたくないと思って、ぼくは走って自分の部屋へと戻った。  そして、Xに向かって、お父さんについてしゃべった。  お父さんについてしっていること、そして、お父さんがぼくとお母さんを捨てたことについて。  Xの青色と赤色の模様が、また少しずつ増えていった。
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