Count,12 今の君

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一瞬で、地の底に叩き付けられた。 崖から突き落とされたような衝撃は、抉るような痛みとなって心を撃ち抜く。 (ほら、やっぱり……) 面と向かって気持ちを告げられた今、きっともう立ち直れない。 (泣くな……) 泣けるような立場じゃないのだからと言い聞かせ、鼻の奥のツンとした痛みを堪える為に歯噛みする。 「……なんてね」 程なくして静かだった店内に落ちたのは、少しばかり意地悪なニュアンスを含んだ声音。 咄嗟に榛名さんを見上げると、キョトンとしている私を見つめていた彼が破顔した。 「嘘だよ」 「何が……?」 「さっきの言葉」 (さっきの言葉、って……?) 声にならない疑問を瞳で訴える私の気持ちを察するように、眉を小さく寄せた笑みが向けられる。 「軽蔑なんてしていないし、嫌いにもなっていないよ」 柔らかな声が耳に届いた直後、私は目を大きく見開いていた。 「勝手に連絡を絶った結木さんに仕返ししてやろうと思って、ちょっと意地悪してみただけだよ」 それがさっきの肯定の言葉の事だというのは、すぐに理解出来たけれど……。 「どうして……?」 今の私にとって重要なのは、その前に紡がれた言葉の方だ。
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