Count,12 今の君

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「じゃあ、もういいかな」 程なくして、ふと榛名さんがそんな事を言った。 何が〝いい〟のかわからなくて小首を傾げると、彼の瞳が悪戯に緩められる。 「キス、してもいい?」 「え?」 「ずっとしたかったんだ」 恥ずかしげもなくそんな風に言われて、こっちの方が恥ずかしくなってしまった。 「……まさかダメなんて言わないよね?」 まるで駄々をこねる子どものように拗ねた顔が、俯いた私を逃がさないと言わんばかりに覗き込む。 「言わない、けど……」 「じゃあ、いいよね?」 ニッコリと笑う榛名さんから、何とか視線だけは逃れる。 「言えないよ……」 その後で小さく呟くと、彼が眉を寄せながら楽しげに笑った。 「それ、いいって言っているようなものだよ」 クスクスと笑われて、私だけがこんなに緊張しているのかと悔しくなる。 「からかわないで……」 そんな気持ちで榛名さんを睨めば、彼が困ったように微笑んだ。 「からかってないよ。ただ、今まで以上に結木さんが可愛く見えるから、ちょっと戸惑ってるんだ」 「えっ……!?」 榛名さんの言葉に目を丸くした私の唇に、そっと唇が押し当てられた。
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