Count,12 今の君

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「今日、臨時休業だったんだって」 「そうだったんだ」 ドアの方に視線を遣った榛名さんに、苦笑を向ける。 「うん。マスターとはたまたま駅前で会ってここに誘われたんだけど、きっとマスターは最初から榛名さんに連絡するつもりだったんだね」 「そうかもしれない。だって、何としてでも結木さんに会いたかったから、最近は特に通い詰めていたし」 「そんなに?」 「二日に一回は来てたかな」 苦笑いした榛名さんは、ここ最近で一番の常連客だったのだろう。 マスターの策士振りに脱帽しつつ、その行動に納得が出来た。 「……あのさ、本当に私でいいの?」 「まだ信じられない?」 「そうじゃないけど……。ただ、過去は消せないから……」 困ったように眉を寄せた榛名さんに、自嘲気味な笑みを返す。 「そんなのわかってるよ。でも、僕はそんな過去を含めた今の君を好きなんだから、問題ないと思うんだけど」 すると、彼は満面の笑みであっけらかんと言って退け、私の手をそっと握った。 マスターが私達を見たら、きっとあの優しげな目尻に皺が刻まれるのだろう。 そんな事を考えた直後、背後で優しい鐘の音が響いた――。
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