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* * *
「いい加減、覚悟を決めろよ」
ハンドルを握る榛名さんの隣でため息を漏らすと、彼が呆れたように眉を寄せた。
「だって……」
「何?」
「質問攻めにされるのが目に見えてるんだもん、億劫になるに決まってるじゃない。私の母の事を知らないから、そうやって呑気でいられるだけだよ」
きっちりとスーツを着熟す横顔にドキッとしたのを隠し、明らかに憂鬱だとわかるような顔で榛名さんを見る。
「だったら、質問には僕が全部答えるから葵は黙っていればいいよ」
「そんな訳にいかないよ」
「じゃあ、もう覚悟を決めるしかないね」
前を向いたままニッコリと笑う榛名さんは、何だか飄々としている。
私が逆の立場だったら緊張して運転どころじゃないと思うけれど、いつものように安全運転の彼の心臓には毛でも生えているのだろうか。
「もう……。本当にどうなっても知らないからね」
「別にいいよ。そもそも、僕は殴られる覚悟くらいはしているつもりだし」
「いくら何でも殴られたりは……」
「なら、心配事がなくなったよ。良かった、良かった」
あっけらかんと笑う榛名さんに、今日何度目かわからないため息が零れた。
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