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それなのに。
「……うっ……」
「……ン、あ、ぁ」
痛かったら泣いたし、気持ち良かったら声を漏らし喘いでいた。
感情はゼロに近いほど乏しいのに、体は末端まで敏感だった。
「今晚很可爱、(今夜も可愛かったよ) 我的情妇(僕の愛人)」
相手は男も女も関係ない。
求められれば恋人のように甘い蜜を吸わせ、相手の懐に入り込む。
汗と体液を吸ったシーツと、たっぷりの脂肪を纏った男の間から僕はすり抜けた。
「我们能再见面吗?(また、会えるね?)」
次を欲しがるターゲットに、僕はこう言った。
「そうだね、次に会うときは、国家安全部の人間も一緒だと思うけど」
「え?」
意味がわからず、まだ余韻でボンヤリする男に背を向け部屋を出る。
最上階。
脳みそを置き去りにして堕ちていくエレベーターから、外を眺めた。
散らばった光の粒子に目を細めるも、“北方の香港” と言われる大連市の夜景は、もう見飽きていた。
——次の拠点は、日本だ。
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