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「おい! 竜也! 仕事もしないで会社のパソコンで5チャンなんて見てんじゃねぇ!」
ハッとして、事務所に入ってきた先輩の方を振り向く。
「すんません。女の子がまだ出勤してなくて暇だったんで」
俺は、事務所奥の無人チャット部屋に視線を移した。
「あ? まだ柚子来てねぇのか! ブスの癖に重役出勤たぁいい度胸だな!」
「高津さん、言い過ぎっすよ。柚子、そこまでブスじゃないですよ」
チャットレディのフォローをすると、高津さんが上から俺を睨んだ。
族上がりの、暴力団にも入れず、かといってカタギの仕事にも就けない、典型的な半グレの28歳。
しかし目つきだけは一丁前に凄味がある。
「お前、柚子とデキてんのかぁ? チャット女優とヤッたら罰金ってルール知ってるよな?」
「知ってるし、そもそも俺は ″商品 ″には興味ないです」
「お前の方がよっぽど言い方ひでぇぞ」
高津さんはほくそ笑むんで、俺が見ていたネット画面を覗きこんだ。
「んだよ、てっきり ″エロばな掲示板″ かと思ったら、くっそつまんねぇ板見てんなぁ?【ダーウィンの法則は嘘】? なんじゃそら!」
「たまたまっす」
俺は5チヤンを閉じ、カメラのセッティングを確認するためチャット部屋に入る。
「……インテリなんだから、お前なら他にも仕事あるだろうに、な」
溜め息雑じりの高津さんの声を無視し、俺は、女の子たちのエロ部屋のパソコンを立ち上げた。
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