episode 3 お兄ちゃん

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 私の両親に会いたがっていたのに、自分の家族のことは教えたくないなんて、不平等じゃない? 「出身は大連市なんだよね? どんな街なの? 私、中国はおろか海外旅行って行ったことなくて……」 「お父さんは航空会社に勤めてるのに?」  そこで関係のない話が出て、私は頼んでいた梅酒を飲み干した。  やっぱりこの人は、私より “家 ” に関心が強いらしい。 「航空会社でも、お父さんはメーカーだから」 「竜也はどうしてお父さんのような仕事に就かなかったんだろう?」 「どうしてって……お父さんは会社員だから。経営者じゃないもの」 「でも幹部なんだろ? コネで入社できるんじゃないの」  「……」  私はそれに答えず、店員を呼んでサラダと飲み物の注文をした。 「お腹空いちゃった。先に何か摘まんでようよ」
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