episode 3 お兄ちゃん

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「起きないと、全部食べちゃうぞ」  それを言ったのがリウ・ウェイロンなのかお兄ちゃんなのかももう判別つかなかった。 「う……ん」と掠れた返事をして、私はお兄ちゃんの肩にもたれかかった。  なんだか、懐かしい匂いがする。  どんな時でも、昔から、お兄ちゃんの隣なら安心して寝れた。 「こうやってみたら、二人恋人同士みたいだね」  ウェイロンの冷やかしにお兄ちゃんが何て答えたか分からない。睡魔に堕とされながら、私は、おかしな事を思った。  国籍も違うのに、顔が似た二人。  形は違えど、私が好きな人たち。    もし、ここで大災害が起こって、私が他の誰かを救う余力があったとして——  その時、もし、目の前にリウ・ウェイロンとお兄ちゃんがいたなら、どちらを助けるだろうか?  ありえない妄想をしながら、私は、お兄ちゃんのシャツの袖を握った。  昔から、自分の弱い所を滅多に見せないお兄ちゃん。  だから、きっと、家を出た。 勘当されなくても、お兄ちゃんは家から離れていただろう。  でも。  これ以上、遠い所にいかないでね。  肉の焦げる香ばしい匂いに薄く目を開けて、私は、また重い瞼をおろした。
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