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「痛そうだね」
リウ・ウェイロンが、俺の頬を見て言った。
ホームレスを囲い込もうと再び河川敷に出向いたら、先に訪れていた暴力団にイチャモンを付けられ、しまいには殴られた痣だ。
「今はなんともない」
大口開けてユッケをほぼ一口で食べてしまう俺を眺めて、「みたいだね」と自身も料理を口に運ぶ。
箸使いは綺麗だが、意外にも大食漢らしい。出てくる料理、ぺろりと平らげる。
「樹里は、なんでこんなに疲れてるんだ?」
聞けば梅酒を一杯半ほど飲んだだけだという。俺の肩に頭を委ねて眠る樹里の口は、子供みたいに半開きだ。
「彼女はとても真面目だからレポートも一生懸命仕上げるんですよ」
敬語で、しかし言葉ほど感心した様子もなくリウ・ウェイロンが答えた。
「……ふぅん」
二人の仲は急速に冷めてしまったのだろうか?
食事が終われば、会話はますます萎んで、個室には樹里の寝息だけが良く響いた。
二人に誘われるまま参加した己を戒めつつ、俺は持って来た紙袋をリウ・ウェイロンに差し出した。
「はい、ちゃんと洗ったから」
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