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「……モデルって、雑誌ですか?」
地味な方が、名刺を見ながら興味を示した。
「それもあるね。生の動画配信もあるし監督の元、撮影もある」
あからさまにAVだと言えば乗ってこないし、嘘をつけば犯罪になるしで難しい。
「監督?」
訝しそうにしていた美人の方が、スマホで名刺の会社名を検索し、すぐに俺に突っかかってきた。
「それ、アダルト系でしょ!? なめてんの?」
「なめてできる仕事じゃないから、選んで声をかけてるんですよ」
「誰でもいいくせに!」
今日のターゲットは手強かった。
「いこいこ!」
女二人、逃げるように去っていく。
地味な方が俺を振り返って、微笑んで言った。
「おにーさん、黒髪だったらリウ・ウェイロンみたいでカッコいいのに!」
—— “リウ・ウェイロン ”……。
最近、よく耳にする名前だ。
「リュウヤさん! ゲキチンだった?」
覚えなくてもいい日本語を口にして、ワン・カイが近寄ってきた。
「あぁ、いまんとこ収穫ゼロ。ワンは?」
「へへ、フィリピンの子と後でジムショに行くヤクソクしました!」
「まじか。優秀だなー」
角刈りに胡散臭いスーツ。それでも話を聞いてくれる女がいるのは、ワン・カイが一生懸命話すからだろう。
「ところで、また “リウ・ウェイロン” に似てるって言われてましたねぇ、リュウヤさん」
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