episode1 妹の彼

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「……モデルって、雑誌ですか?」  地味な方が、名刺を見ながら興味を示した。 「それもあるね。生の動画配信もあるし監督の元、撮影もある」  あからさまにAVだと言えば乗ってこないし、嘘をつけば犯罪になるしで難しい。 「監督?」    訝しそうにしていた美人の方が、スマホで名刺の会社名を検索し、すぐに俺に突っかかってきた。 「それ、アダルト系でしょ!? なめてんの?」 「なめてできる仕事じゃないから、選んで声をかけてるんですよ」 「誰でもいいくせに!」  今日のターゲットは手強かった。 「いこいこ!」  女二人、逃げるように去っていく。  地味な方が俺を振り返って、微笑んで言った。 「おにーさん、黒髪だったらリウ・ウェイロンみたいでカッコいいのに!」  —— “リウ・ウェイロン ”……。  最近、よく耳にする名前だ。 「リュウヤさん! ゲキチンだった?」  覚えなくてもいい日本語を口にして、ワン・カイが近寄ってきた。 「あぁ、いまんとこ収穫ゼロ。ワンは?」 「へへ、フィリピンの子と後でジムショに行くヤクソクしました!」 「まじか。優秀だなー」  角刈りに胡散臭いスーツ。それでも話を聞いてくれる女がいるのは、ワン・カイが一生懸命話すからだろう。 「ところで、また “リウ・ウェイロン” に似てるって言われてましたねぇ、リュウヤさん」
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