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俺は、勘当されても樹里とだけは連絡を取り合っていた。
二歳下の妹は、俺に似てなくて、初心で真面目を絵に描いたような女の子だ。きっと、今まで男と付き合ったこともない。
夢は通訳、もしくは翻訳家になって活躍すること。あわよくば、リウ・ウェイロンに会って一緒に仕事をすることだそうだ。
なので、この春から都内の外国語大学に通っている。
幸せになってほしい。
大学で変な男にひっかからないで、社会に出て普通の男と結婚し、温かな家庭を築いて幸せになってほしい。どうせなら俺の目の届く範囲で。
……なんて親父か?
俺は、少しシスコンなのかもしれない。
そんな目に入れても痛くない妹が、夜勤明けの俺に電話してきたのは、まだ肌寒い朝だった。
「おにぃちゃん! 聞いて! 学校でリウ・ウェイロンに会っちゃった♡」
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