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「初めまして。青崎結都(あおさき ゆいと)です」
「あ、えっと、永瀬叶和(ながせ とわ)です」
目の前の男は、永瀬叶和という名前らしい。
なんか女みたいな名前してんな……。
ますます聞いたことねぇんだけど。
「お前俺と同い年?どこのクラス?」
「あ、その……一応同い年、です」
「ふーん?」
どれだけ待っても、どこのクラスなのかは答えてくれなかった。
緊張して質問がすでに頭から抜け落ちてるのか、はたまた答えたくないのか……。
いずれにせよ目の前でずっと萎縮されてたらこっちも居心地悪いから、俺の隣に座るように頼んでみた。
だって胡座をかいて座っている俺とは違って、永瀬くんはずっと俯きながら立ったまま。
なんかこの図って俺が偉そうに威張ってるみたいじゃん。
「同い年なんだろ?敬語もなくていいよ」
「え、でも……」
「癖になってる感じ?それなら無理に変えなくてもいいけど」
「あ、えっと……じゃあお言葉に甘えます……」
ちゃんと俺の隣に座り直してくれた永瀬くんは、それでも俺みたいに気楽な座り方をするわけじゃなくて、膝をギュッと抱え込みながら座っている。
突然告白とか大胆なことするわりに結構気弱なのな……。
俺が永瀬くんの方をチラッと見てみれば、その度に永瀬くんの方がビクッと跳ねる。
なんか……ますます居心地悪くなってねぇ?これ……。
「それでさっきの告白だけど」
「あ、うん……」
「永瀬くんは答えなくてもいいって言ってたけどさ、やっぱりウヤムヤなままなのは良くないと思うし」
「そう、だよね……」
「だからごめん。永瀬くんとは付き合えないです」
「うん、ありがとう……」
変に期待させるのもよくない。
それは今までの経験から痛いぐらいに分かっている。
そして同時に、永瀬くんにも失礼になっちゃうから。
いいものはいい、ダメなものはダメとはっきり伝えるべきなんだ。
せっかく伝えてくれたのに申し訳ないって気持ちはもちろんあるけど、でもちゃんと伝えた方がまだ傷は浅いと思うから。
俺の独りよがりかもしれないけど。
「気持ちはめちゃめちゃ嬉しいよ。ありがとう」
「……そっちの方が残酷じゃないかな?」
「え、マジ?でも本心だしな……」
「ちゃんと分かってるよ。こちらこそありがとう」
当たってすぐに砕けて、一番つらい時なはずなのに永瀬くんは俺に笑顔を向けてくれた。
しかも他意を全く感じない純粋なお礼つき。
すごいな……。
もし俺が告白して振られた側だったら、すっげぇ傷ついて一カ月は引きずりそうなもんなのに。
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