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「あのさ、俺ら男同士だけどさ」
「え…?あ、うん」
「俺のどこ好きになったん?これと言って接点なんてなかったと思うけど」
「そうだね……」
自分で自分の顔が良いとは言うまい。
だけど、中学の時とか、高校入学してからもそうだけど、それなりに女子には告られてきたとは思う。
可愛い子とか面白い子とか色んな子がいたものの、結局どの子とも長続きはしなかったんだけどな、情けないことに。
いつも付き合って数ヶ月で「なんか違う」とか「一緒にいても楽しくない」とか言われて別れてた。
きっと性格が合わなかったんだろうな。
俺でも「つまんない」とか言われたら多少なりとも傷つくんですけど。
まぁそんなこんなで女の子としか関係を持って来なかった俺だからさ。
男なんて当然初めてなわけで。
永瀬くんのことは秒で振ったわけだけれども。
なんとなく理由は気になった。
同性っていう、ある種特別な条件が気にならないぐらいの魅力的なものが、俺にあるとは思えない。
「雰囲気、かな」
「雰囲気?」
「……青崎くんは僕とは真逆の人というか。みんなと仲良くできるし明るいし、僕にはそんなことできないから羨ましなって、そう思ってて」
「そうかなぁ」
「うん、そうだと思う。僕を魅きつけるには十分なくらいにね」
永瀬くんには、俺がそんなふうに見えているらしい。
友達が少ないとは思わないし、暗い性格でもないだろうし、永瀬くんが言っていることはあながち間違いじゃないんだろうけど。
他の人から改めて言われると、なんか実感湧かないもんなんだな。
まぁ俺にとっちゃ全部普通のことなんだし。
「そっか。永瀬くんの中の俺ってそんな感じなんだ」
「うん……」
「俺そんなにいいヤツじゃないと思うけどな〜」
「謙虚だね、青崎くん」
俺からしてみれば、永瀬くんの方が謙虚だ。
ついさっき俺に振られたのに、本当は辛いはずなのにずっと笑顔でいてくれて、嫌な雰囲気ひとつも感じさせなくて。
ほんとに、こんなにいいヤツがなんで俺のことなんか好きになったんだか。
きっと俺よりもっといい人見つけられるよ。
そう永瀬くんに言ったら、永瀬くんは「そんなことないと思うけどなぁ」って言って、やっぱり笑ってた。
「あの、さ……」
「うん?」
「青崎くんさえ良ければ、これからも声かけるぐらいはしてもいい、かな?」
「それは、もちろん。俺もこれで気まずくなるとか嫌だし」
「……ありがとう」
ほら、今後の接し方とかもちゃんと考えてて。
俺の気持ち尊重してくれて、永瀬くんの気持ちはどうなんだろうって思わなくもないけど、でも永瀬くんも俺ともう話したくないって訳でもなさそうだし。
マジで永瀬くんの方がいい人だよ。
俺そこまで相手の気持ち考えらんないもん。
「あ、僕もう行くね」
「次移動とか?」
「……うん、そうなんだ」
「そっか。またな」
「うん、またね」
唐突に告白されて、そのままの流れで振って、でもこれからも話そう、仲良くしようってなって。
短時間の間で情報過多すぎるだろって思うけど、これが俺と永瀬くんの出会いだった。
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