4人が本棚に入れています
本棚に追加
「今夜はありがとう。また、満月の夜にあの湖で」
あの夜の別れのとき、ネリーはそう言った。あれから満月は12回来たけど、会えなかった。
キミに会いたい、と思う。たった一夜だったけれども、心の友に出会えた気がした。
「実はね、ここで喰われてもいい。そう思ってたから、あなたが怖くなかった」
ほろ酔いにしてくれる魔法ジュースのおかげか。パーティーの最中、ネリーは本音を打ち明けてくれた。学校での日々が相当辛かったらしい。
「ボクもね、ここに通ってたんだ。けど、オオカミ男ってことがバレてからは、居場所がなくてね。卒業できなかった。それに、パーティーも楽しんだことはなかった。今夜は誘ってくれてありがとう」
そしたら、ネリーはううんと首を振って、とても素敵な言葉を返してくれたんだ。
「あなたの目がきれいだったから、誘いたくなったの」
聞いて心臓が飛び出そうになって、ボクもそう思ったよって、返せなかった。
もう一度会えたら、言いたい。いや、会いに行ってみようか。
町に行くのは勇気がいる。人間の見た目なら大丈夫だとわかっていても。でも、このままここにいても変わらないだろう。
ネリーの居場所は知らない。でも、見つけられる気がする。
魔法使いが身につけている魔力は香水のようで。ボクはその魔力をかぎ分けられる。たとえ微量でも。野いちごみたいな甘酸っぱい香りは覚えている。
さあ、行くよ。キミのところへ。
最初のコメントを投稿しよう!