1.お世話係

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新人の頃、ゆうりは要領が悪くいつも怒られてばかりで、誰かに向ける顔は泣き腫らした顔ばかりだった。 毎日業務に追われスケジュール管理もまともにできなくて、課題を提出するのに必要な過程も把握できていなくて『勤務表見てリーダーと私に提出できる日考えて』と何度郡司に冷たく言われてもできなくて…。 それくらい、要領が悪かった。 その後も、自分は出来の悪い人間なのだと思い知ったのをきっかけに、何も上手くいかなくなった。 インシデントを連発し、本当に落ち込んで仕事が手につかない日もあった。 毎日のようにその日のリーダーと振り返りをし、医療安全管理委員である郡司と振り返りをし…。 思い返せば地獄のような日々だった。 プリセプティーのやらかしたことは全てプリセプターである郡司に報告され『花村はやばい』『花村の教育をどうするか』などなど、プリセプター会で議論されていたらしい。 今でこそ笑い話にできる話だけど。 しかしその時、郡司は『私の教育不足です』と言ってくれたらしい。 決して、ゆうりが悪いなどとは言わなかったと仁藤がコッソリ教えてくれた。 『里々佳は言い方キツいけど、花村のこと一番に考えてるし、分かろうとしてるから。すげー大事に思ってるし、会議でもめっちゃ守ってるよ』 出来損ないで自信がなくて、毎日泣いてばかりの自分がそんな風に言われるなんて思っていなかった。 ましてや、病棟で一番怖いと言われている郡司に。 きっとこの人は悪い人ではない。 そう思うけれど、いつも放たれる言葉は冷たくて心抉られるものばかり。 その裏にある優しさを、未だに感じたことがない。 だから仁藤の言葉も、半分しか信じられない。 そうだったらいいなという期待を込めて、その半分を信じているのが現状だ。
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