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記憶が途切れ途切れになりながら、ゆうりは目の前のお酒をチビチビと飲み続けた。
先輩に勧められたお酒を飲まないなんて、ありえない。
あぁ…重い…。
さっきからなんとなくそう感じるこの感覚はなんだ?
ふと重さを感じる太腿を見た時、郡司が膝の上で寝ていた。
……え、何で?????
一気に酔いが覚めた。
何故自分が郡司を寝かし付けているみたいな感じになっているのだ。
ゆうりが正気を取り戻したことに気付いた同期の鶴野葵が「大丈夫?」と駆け寄ってきてくれた。
葵は同期の中でも一番気の利く優しい女の子だ。
仕事が丁寧過ぎて効率を忘れた彼女の中には、定時上がりという言葉は存在しないとゆうりは思っている。
「え、あ、うん…で、なんで郡司さんここで寝てるの…?」
ゆうりは必死に記憶を呼び起こそうとした。
八神主任に変なお酒を飲まされて…昔の話をして…そして郡司を呼び付けて……。
あ、それか。
八神主任が郡司に『里々佳ー!ちょっと来てー!』と周りの会話に負けないくらいの大きさの声で叫んでいたのを思い出した。
そして『世話になったんだから、お世話してやらんとー!』という言葉も。
「ごめん…なんでもないわ」
「ゆうり大丈夫?もうここ出ないとだけど…」
うっそ…。
もうそんな時間なの…?!
こんなに飲まれるタイプじゃないんだけどな…。
ゆうりは髪を撫で付けて「へーき」と答えた。
「てか郡司さん…どうしよ…」
「これから二次会行くってみんな話してるけど…」
「えっ…」
「ゆうり行く?」
いや、行く?と言われても…。
行ってもいいんだけど、この膝の上に寝ている人をどうにかしなくては。
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