1.お世話係

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23時に帰宅してお風呂に入って、とっくに日付が変わった頃に泥のように眠りに落ち、起きたのは6時。 人間の睡眠時間としては少な過ぎるようだけど、日勤ではこのスタイルに慣れてしまった。 日頃、患者さんの睡眠について考えるわりに自分のこととなると無頓着だ。 ゆうりは欠伸をしながらベッドから起き上がり、カーテンを開けた。 雲間から覗く穏やかな日の光が、5畳の部屋を優しく照らす。 オンボロ寮だけど、日当たりが良く、内装もレトロな雰囲気でわりとお気に入りだ。 ベッドから降りて5歩で行けるキッチンには、お気に入りのコーヒー豆が3種類並んでいる。 5連勤の最終日はどれにしようと悩みながら、ゆうりは一番好きなモーニングブレンドの缶を手に取った。 蓋を開けると香ばしい香りが漂ってきて、心が安らぐ。 スプーンで豆を掬ってミルに投入し、ゴリゴリと挽かれる音に耳を傾けながら、ゆうりは郡司に提出したマニュアルのことを考えた。 緑チームのチームリーダーである郡司には、他にもたくさんの仕事がある。 チームのみんなに仕事を割り振ってはいるが、結局全部目を通すのは郡司だ。 転院する患者さんのサマリー、勉強会の資料、新人関連のプリセプターからの相談事……。 それに彼女は病院の医療安全管理委員としての仕事もあり、インシデントを起こしたスタッフと毎日のように振り返りをしている。 というこれらの仕事は本業ではない。 あくまで本業は、"患者さんの看護"である。 その本業以外の時間で上記全てをこなす郡司は怪物であり、病棟でもある意味怪物の部類にあたる。
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