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「お金取っちゃいな。月額いくら?3万?」
「いや…。100万でしょ」
「やったね花村!タダだって!」
八神主任はガッツポーズをしてゆうりに目を向けた。
またふざけてるんだと思って、ゆうりは「助かりまーす」とガッツポーズを返した。
「え?」
「…え?」
「本気で言ってんの?」
感情のない目を向けられて、背筋がゾワッとする。
「里々佳…人助けだと思ってさぁ。てか一人暮らしなのにあんなだだっ広い2LDKの物件に住むとかどういう神経してんの」
「……」
この空気、どうしたらいいのだろう。
自分は月100万払って郡司の家に住まわせてもらわないといけないのだろうか…。
あの汚部屋の光景が蘇ってくる。
あそこに住めと言われたら…。
そもそも家賃以前の問題だ。
誰と一緒だろうがちょっと…いや、大分厳しい。
ちなみに、郡司はあの飲み会の後ゆうりが家まで送ったことやその他云々、一切覚えていないようで、後日涼しい顔をして出勤してきた。
もちろん、お礼など一言もなかった。
だからゆうりもあえて何も口にせず、普段通り郡司と接していた。
「冗談キツいわ八神さん」
郡司は「パワハラですか」と呟いてペットボトルのお茶をひと口飲んだ。
ーーーピリリリッ
その時、郡司のPHSが音を立てた。
「ハイ。…分かった。もう戻る」
「休憩中は誰かに預けなさいってルールでしょ」
八神主任は休憩室から素早く出て行った背中に声を投げかけた。
「これだから困るよねー、あの子は」
「わたしも休憩中にリーダー代われるくらい成長できればいいんですけど…」
「向上心あるねー、いいねー」
八神主任はニヤニヤしながらゆうりを見つめた。
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