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「あ、そだ。今日さぁ、研修で隣の県から来てる循環器のドクターたちとの飲み会があるんだけど。花村も来ない?」
「え?!わ、わたしなんかが行って大丈夫なんですか…?」
「へーきへーき!将来有望ナースって伝えとくからぁ。それに十河先生とか、嶺田先生もいるから、絶対盛り上げてくれるって。そんなガチガチにならないと思うよ?」
十河先生と嶺田先生は翠和大学病院の循環器内科の先生だ。
この2人は30代で、ノリが良くてまあまあイケメンの絡みやすい先生たちだ。
八神主任がこの2人のどちらかを狙っているのかどうかは分からない。
ちなみに、2人とも狙っているのかどうかも。
「4Aからは他に誰か行くんですか?」
「楠川さんと、あたしと、あと里々佳かな。先生たち里々佳に飲ませようとするかもしれないから、花村守ってやって」
八神主任はそう言うと、ゆうりの背中をバンッと叩いた。
…え、なんでそうなるの?!
「はい…」
確かに、歓迎会の日の郡司を見たら、あの人には飲ませてはいけないというのがよく分かった。
ていうか、なんであの日はあんなことになってしまったのだろうか。
今までほとんど飲んだことなかったくせに。
「てかこの間の歓迎会、なんで郡司さんあんな風になっちゃったんですか?仁藤さん、ああなるの分かってて郡司さんに飲ませてましたよね?」
「仁藤?」
八神主任は不思議そうな目をゆうりに向けた。
「仁藤がそんなことするわけないでしょ。里々佳が飲めないの知ってるんだから」
「じゃあ、自分から飲んだっていうんですか?」
「さぁー?見てないから分かんないけど。里々佳に聞いてみれば?」
「聞けませんよ、そんなことっ…!」
「あ、ちなみに親睦会は19時に駅前の"宗寿庵"ってとこでやるから、よろしく」
八神主任は「花村は遅刻してくるって伝えとくね」とクスクス笑いながら休憩室から出て行った。
残業確定かよっ…。
逆にやる気出てきたわ。
それにしても"宗寿庵"って…。
この辺では普通じゃあまり立ち入れない高級料理店のうちのひとつだ。
そんなところに、自分なんかが行っていいのだろうか。
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