2.酔っ払いの戯言?

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「最近のナースは可愛い子が多いなぁ」 「やだ池松先生!アタシはどうなるんですかっ。あ、花村ここ座って〜」 楠川師長は少しずれて、ゆうりが座れるようにスペースを空けてくれた。 「失礼します…」 ゆうりは楠川師長の隣に座った。 師長の隣はなんだか緊張する。 「楠川さんには楠川さんの良さがあるでしょう〜。それに、さっき話してた郡司さんって子も抜群の美人だね」 「郡司ですか?お呼びしましょうか?」 楠川師長が「郡司ー!」と呼ぶと、隣の席の郡司がキョトンとした目を向けた。 こっちこっちと手招きする楠川師長を見て、郡司は愛好的な笑みを浮かべて周囲の人々に会釈した後こちらに来た。 迷いもなくゆうりの隣に腰掛ける。 ふわっと上品な香りがした。 「敏腕と聞いています」 目の前に座る眼鏡をかけた優しそうな先生が言った。 「そんな…。楠川師長にはそう見えているのかもしれませんね」 郡司はまた他所行きの声でそう言った。 「郡司は今、同期と八神と一緒に看護研究をしているんです。発表会に出られるほどなかなか優秀なんですよ」 楠川師長はニコニコしながら郡司のことを紹介した。 「おぉ!そうなのか!ちなみに研究というのは?」 「術後せん妄の看護についてです。病棟でトラブルが多いので」 郡司はさりげなく出された小さなお猪口に注がれたお酒をクイっと流し込んだ。 ゆうりは「ヒッ」と声が漏れそうになった。 そんなもの…。 郡司を見ると、彼女は池松先生から視線を逸らさずに「研究は心臓血管外科ですが、9月に大阪である循環器学会にもとても興味を持っています」と言った。 「おー。あれは僕らは出ないけどね。知り合いが出るから、見に行けるように手配しようか?詳細は追々伝えるよ」 「ありがとうございます。是非、見に行きたいです」 池松先生は「熱心な人がいて羨ましい」と楠川師長に嬉しそうに耳打ちした。
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