2.酔っ払いの戯言?

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時刻は22時…だと思う。 湿気を帯びた生温い風に吹かれながら、ゆうりは半開きの目で橋を渡っていた。 病院に向かう途中にある橋だ。 やり残した記録を入力するために、病院に向かっているのだ。 あの後、ゆうりの飲みっぷりを見た先生方はゆうりにどんどんお酒を勧め、最終的に「明日も仕事なんで」と郡司がやんわりかばってくれた。 本当は休みだけど。 郡司を先生から守ってと八神主任に言われていたのに、立場がまるで逆になってしまった。 「大丈夫…?花村」 隣でそう言ったのは郡司だ。 ハッキリとは言わないが、どうやら責任を感じているようで「記録手伝うよ」と言ってついて来てくれたのだ。 「大丈夫です…。わたし、そこまで飲まれるタイプじゃないんで」 ゆうりは途中で買ったミネラルウォーターをがぶ飲みしながら歩いた。 少しでも早くアルコールを体外に排出しようとしているのだが、今のところ気休めにしかなっていない。 「なんであんなことしたの…」 あんなこととは、升のお酒のことだろうか。 「八神主任に言われたんです。郡司さんお酒勧められると思うから、守ってやってって」 「え」 郡司は「なんで花村にそんなこと言うかな…」と小さく呟き左手で顔を覆った後、髪をかき上げた。 「プリセプティーだったんだから、それくらいやれよってとこですかね?」 「もう2年前の話だけど」 郡司と話しながら歩く夜道。 お酒が入っていなければ、ここまで会話は持たなかったかもしれない。 だとしたら、少しはあの升のお酒にも感謝しなくては。
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