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病院に着く頃には2本目のペットボトルが空になっていた。
さすがに病棟では記録できないので、別棟にある図書室で記録をすることにしたゆうりは、電気のついていない別棟の入り口に社員証をかざしてゆっくりと入り込んだ。
22時を回った建物内は薄暗く、まるで夜の学校に忘れ物を取りに来た小学生のような気分になる。
2階の図書室には、もちろん誰もいなかった。
ゆうりはデスクに荷物を置きパソコンの電源を入れると、椅子にドサリと腰を下ろした。
郡司も同じようにパソコンの電源を入れて椅子に座った。
パソコンが立ち上がるまでもそうだが、電子カルテが立ち上がるのにも時間がかかる。
2人は画面を見つめながら無言の時を過ごした。
しばらくして、風の抜けるような、鮮やかな、パソコンが立ち上がった音がした。
「花村は…お酒、強いんだね」
「強いんですかね?今日は、記録やらなきゃって思ってたから…」
「じゃあ…普段は弱いの?」
「いや。弱くもない…ですかね。そこまで酔わないですね」
お酒に強いわけではない。
かと言って、弱いわけでもない。
誰かと飲む時は、相手に合わせて飲むばかりで、自分のペースというものが分からない。
だからお酒の量もその時それぞれだ。
それは、強いと言うのか…?
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