51人が本棚に入れています
本棚に追加
/55ページ
「花村!」
「…っぁはいっ!」
「大丈夫…?寝てたよ?」
「あ、すみません」
ゆうりは自分の頬を叩いて『これから記録するんだぞ』と自分を奮い立たせた。
酔っ払った勢いで変なことを書かないように気を付けなくては。
「今日無理して記録することないんじゃない?」
「いや…明日休みなんで」
「…そう」
郡司は何か言いたげな目をこちらに向けたが、ゆうりは気付かないフリをした。
「IDとパスワード教えて」
「えっ」
「私の名前で記録したらおかしいでしょ」
「あ…そっか…。わかりました」
ゆうりは郡司のパソコンに表示された電子カルテのログイン画面に、自分のIDとパスワードを入力した。
「何の記録が残ってるの?」
「沢木さんのICのことと、あと入院のこと全般と…あと、経時記録です」
「ICと入院のことは分からないから…。とりあえず受け持ちの経時記録書くね。患者さん教えて」
2人で隣に座り、ゆうりが今日あったことを伝え、郡司が患者さんの記録をする。
他の患者さんのことを話しながら自分は別の記録をやるとか、結構無謀なことをやっているけど、なんだか今はやれる。
キーボードをタイプするカタカタという音が、静かな図書室に響き渡る。
記録をしながらゆうりは、新人の頃郡司と一緒にこの図書室で過ごした日々を思い出した。
最初のコメントを投稿しよう!