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「それにしてもさぁ、この管おっかないなぁ。取り方知ってる?」
「奥様からも、先生からも、これは白濱さんを守る大事な大事なものと言われているので、このまま大切にしておいてください。どうかお願いします」
「分かりました。ありがとう」
「いいえー。困ったり、分からなくなったら『たすけてー!』って言ってもいいですからね。わたしたち、夜中じゅうずっとここにいるので」
「えぇ!そうなの?大変だね…あ…お饅頭あるから…食べな?」
白濱さんは「美味しいお饅頭があるから…」と枕元をガサゴソと漁り始めた。
「すぐそこにいますから、見付けたら教えてください」
「わかった!」
「安静にしてないといけないので、横になってましょうね。…雑誌読みます?」
「前ねぇ、箱根に行ってねぇ」
「…じゃあ、これなんかピッタリですね」
ゆうりは、床頭台の引き出しから"箱根湯本"と書かれた雑誌を取り出した。
「おぉー懐かしい!」
「行ったことあるんですか?」
「昔妻とよく行ったんだよぉ。また行きたいなぁ…。ねぇ、あっちの茶の間に妻がいるはずなんだけど。おーい!美佐子ー!」
「白濱さん。元気になった時のために、今から行きたいところチェックしておきましょう。奥さん今忙しそうだから、わたしから伝えておきます」
ゆうりがそう言うと、白濱さんは「そう?悪いね」と言ってベッドに横になり、熱心に旅行雑誌に目を通し始めた。
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