3.秘密

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「花村ー?」 ナースステーションから郡司の声がした。 白濱さんに「また来ますね」と言った後、ゆうりは小走りで郡司の元へ行った。 「目借りていい?」 「はい」 「黄色チームに入った緊急入院の糸井さんの点滴届いた」 郡司は手短に言うと、パソコンのオーダーと点滴のラベルを見比べて、名前と処方内容を読み上げた。 ゆうりも続けて読み上げる。 「時間60ね」 「はい、オッケーです」 ゆうりはラベルに"60ml/h"と油性マジックで記載して後ろにあった点滴棒に引っ掛けた。 今日の黄色チームの受け持ちは1年目の広山だ。 点滴を挿れる余裕などないだろう。 「明日、カテの人ですか?この人」 カテとは、心臓カテーテル検査のことだ。 造影剤を使ったり使わなかったり、ステントを挿れたり、ただ風船のようなもので血管を押し広げるだけだったり、内容は患者さんそれぞれで、場合によってその場で治療内容が変更になることもある。 カテの患者さんは、大体前日から点滴を挿れられ、2日目に検査をして、3日目で退院するという2泊3日スタイルを取ることが多い。 多い日では7件程こなすので、同じチームにカテの患者さんが固まっていると、誰が誰なのか分からなくなることは日常茶飯事だ。 なので、細心の注意を払わなければならない。
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