51人が本棚に入れています
本棚に追加
/57ページ
「そう。若くてあまり手もかからない感じっぽいけど。胸部症状あるからちょっと心配」
「点滴挿れるなら、わたし行ってきましょうか?」
「え、余裕あんの?」
「とりあえず夕食前にすることは終わってるんで。今、インスリンとかもないですし」
「あー…」
郡司は少し考えた後「広山と仁藤が残ってること無ければ点滴お願い」と言った。
「はい」
広山は1年目の中でもわりと出来のいい子だ。
この数ヶ月間要領よくやって来ていたようだが、最近は上手くすり抜けてきてきたツケが回ってきて、色々とやらかしている。
こういうタイプが一番危ないんだよなぁ…とゆうりはいつも思っていた。
「あっ!」
「なに」
「田中さんの血糖測定忘れてました」
ゆうりは「田中さんの血糖測ったら2人に声掛けてきます!」と言って、ガラガラとカートを引きながら14号室に向かった。
こういう小さなミスや見落としが目立つ自分はまだまだだな、とゆうりは1人で反省した。
田中さんの血糖値は102。
スケールに引っ掛かっていないのでオッケーだ。
今度はバタバタと走りながら広山と仁藤を探しに、担当の部屋がある方向に向かう。
夜勤は人数が少ないので、チームワークが大事だ。
余裕のある人がフォローしなければ。
10号室辺りに行くと、仁藤の声が聞こえてきた。
カーテンを閉めて病室から出てくる仁藤に「手伝えることありますか」と問う。
「あー。あと中野さんの血糖測るだけだから大丈夫。サンキュー」
「了解です」
ゆうりはニコリと笑った後、小走りで1号室の方へ向かった。
2号室や個室からは広山の声が聞こえなかったので、おそらく1号室に居るはずだ。
最初のコメントを投稿しよう!