3.秘密

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「…全く分からないの?腹膜透析」 病室を出た後、ゆうりは言った。 「すみません…」 「なんで分からないって申し送り受けた時言わなかったの?てか、情報取ってる時点でヤバいって思わなかったの?」 「…すみません」 広山は小さな声で呟いた。 「怖いって思わない?」 「え…?」 「患者さんはみんな、病院に来たらなんでもやってくれるって思ってるし、関わる人みんながなんでも知ってるって思ってる。新人だろうがベテランだろうが、患者さんには分からないんだよ」 「……」 「広山さんのこと、みんな信頼して命預けてるんだよ。だから分からないことはちゃんと分からないって言って。フォローしてくれる人はいっぱいいるからさ」 ゆうりは「受け持つってそういうことだからね」と広山の肩をポンっと叩いた。 広山は目をうるうるさせて「すみません…」とまた呟いた。 「何で誰にも相談しなかったの?」 「みんな忙しそうだったし…。あと…郡司さんに言うの怖くて…」 確かに躊躇するのは分かる。 あの大きな目で見られるだけで背筋が凍りつきそうになるのはみんな同じだ。 ゆうりはもう慣れてしまったが、今でもたまに「やばっ」と思うことはある。 「だとしても、言わなきゃダメだよ」 「…花村さんって、郡司さんがプリセプターだったんですよね?」 「うん」 「辞めたいって思ったこと、なかったんですか?」 「え?んー…ないかな」 ゆうりは「まぁ怖いは怖いけど」と苦笑いした。
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