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0時25分。
じっっっくりと報告を聞く時間だ。
0時前に軽く報告していた仁藤はとっくに仮眠休憩に入っていて、ゆうりは預かったPHSを充電器に差し込んでいた。
問題は、広山。
ゆうりが未だに不器用な感じでパタパタと少々遅めのタイプで記録をしているすぐ側で、広山は1号室の1ベッドの患者さんから丁寧過ぎるほど丁寧に報告している。
が、腹膜透析の患者さんに関しては触り程度しか報告していなくて、案の定郡司から「やったことあるってことでいいの?」とシンプルかつ図星なツッコミをされていた。
「……」
「花村に教えてもらってたよね?」
何も答えず、黙る広山。
「今日送りもらったの誰?」
「深瀬さんです」
深瀬とは、広山の同期で2年目の子だが、この子もまた広山と同様分からないことを濁すタイプだ。
ゆうりは心の中で『やっちまったなぁ』とため息をついた。
「深瀬は腹膜透析ちゃんと理解してたの?」
「え…えと…」
「広山は気を付けなきゃいけないこととか、観察しなきゃいけないこととか、分かってるんだよね?」
「……」
「黙ってちゃ分かんないんだけど」
「…すみません」
広山が涙声でそう言ったところで、郡司は大きくため息をついた。
全てを悟ったようだった。
「情報収集の時点で分からないことあるでしょ?分からなかったらリーダーとか先輩とか、分かる人になんで聞かないの?…怖いって思わないの?」
「……」
怒っている郡司の目を見て怖気付いたのだろうか。
広山はポロポロと涙を零した。
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