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「患者さんが広山のこと信頼してるって意識、ある?」
「……」
「今日はたまたまやり方知ってる花村がいてくれたから良かったからいいけど…。いなかったらどうするつもりだったの」
グスン、と広山の泣き声が聞こえた。
自分が怒られているわけではないのに、ゆうりは何故だかそわそわして胸が痛くなった。
新人の頃が、昨日のことのように思い出される。
なかなか答えないことに見切りをつけた郡司は「もういい」と冷たく言い放った。
「帰るまでに私に腹膜透析のこと調べて報告して。病態はもちろんだけど、観察項目と、リスクと、問題があった時の対応と…。あと、自分がどう行動するべきだったのか考えてきて」
「はい…」
「はい。じゃ、次の患者さんの報告お願いします」
郡司はキリッとした目を広山から自分の情報用紙に移すと、細かくメモを取り始めた。
しばらく大人しくメモを取っているなと思っていたが、すぐに鋭いツッコミが出てきたり、引っかかることを突き詰められたりと、15人の報告が終わる頃には2時前になっていた。
新人や2年目はこんなもんか…と思いながら、ゆうりは心の中で『マジお疲れ』と呟いた。
死にそうな目とパッと目が合う。
「休憩中、点滴更新する人いる?」
「…あ、ないです」
「オッケー。あとコール対応くらいでいいかな?」
「はい」
ゆうりがニコリと笑うと、広山は泣きそうな顔をして、奥のパソコンが並んでいるスペースに吸い込まれるように歩いて行った。
今のうちに記録しておかないと、明けで昼過ぎに帰ることになるのは目に見えている。
最初のうちは休憩時間返上で記録をしなければならない。
最初どころか今もだけど…と、ゆうりは自分のことを思いながら考えた。
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