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色々と突っ込まれながら報告を終えたのは2時40分。
新人の頃よりは大分時間は縮んだ。
「新しい薬のこと、もうちょっと調べといて。あれ、なんでわざわざ入院して時間で採血してるか分かる?」
「あ、えっと…」
カルテを読んでもなんとなくしか理解出来ていないところを指摘され、ゆうりは頭を抱えた。
「調べといて」
「はい」
ゆうりはパソコンの近くにある本棚から薬の辞典を出して、パラパラとページをめくった。
ふと横を見ると、広山がパソコンの前でゆらゆら揺れながら記録していて、ゆうりは心の中で『お互い、ガンバロ』と呟いた。
ゆうりは辞典を持ち、円卓のパソコンの前に座った。
カルテを見ながら薬の作用など考えているとパソコンと睨めっこしている郡司に「花村」と声を掛けられた。
「はい?」
「広山のフォロー、ありがと」
「…あー、たまたま探しに行ったら患者さんの前で明らかにオロオロしてて。不信感とかに繋がったらまずいと思ったので」
郡司は「そうね」と鼻からため息を漏らした。
「わたしも、腹膜透析の患者さんで苦い思い出があるので…なんか、放っておけなくて」
「そういえばさ」
「はい?」
「今日明けで家探しに行くの?」
「え」
まさかイケオジたちとの飲み会の日のことを覚えているとは思わなかった。
しかしよく考えたら記録を手伝ってくれていたではないか。
しかもその記録の内容はちゃんとしていて、酔っ払った人が書いたとは思えないものだったし。
じゃあ、あの言葉は本気だったの…?
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