52人が本棚に入れています
本棚に追加
/59ページ
ーーー。
『千冬もだけど、ゆうりも頑張ってるよね』
「そう?」
『毎月、あんなに入れなくていいよ?』
あんなに、なんて額じゃない。
薬学部ってものすごくお金がかかること、知ってるんだから。
足りないくらいだって、分かってる。
「千冬、アイス好きだよね?」
ゆうりはあまりお金の話はしたくなくて、話を逸らした。
『あはは…そうね。勉強中、アイスしか食べないの。ゆうりから他のものも食べなさいって言って!』
「あはは。じゃあアイス送るね」
『もーっ』
「あと美味しそうだなって思ったの送る」
『無理してない?』
「してないよ。わたしは、お母さんと千冬が元気なのが分かって嬉しい」
ゆうりは「じゃあまたね」と言って通話を切った。
また母が何か言ってきそうな気がしたから。
ゆうりは郡司のマンションに向かいながらスマホを操作して、千冬の好きそうなアイスの詰め合わせを探した。
千冬はバニラとチョコとキャラメルが好きなのだ。
7歳も違ったら子供のように思える弟。
だけど、彼も父の死をあの時同じように感じていた。
なんなら千冬の方が、父の死を色んな意味で受け止めていたのではないだろうか。
昔から、千冬の感性には驚かされていた。
人が考えないような視点で色々なことを考える子だった。
きっと、これから千冬の本当の良さが芽を出すのだろうと、ゆうりは密かに思っていた。
最初のコメントを投稿しよう!