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黙々と作業すること4時間。
この間された会話は「これ捨てますか?」「これ要りますか?」「何に使うんですか、これ」とか、そのくらいだった。
郡司はそれに対して「うん」とか「いらない」とか相変わらず素っ気ない感じで答えた。
普通だったらやだなぁと感じるのだろうけど、郡司はいつも素っ気ないので、ゆうりは何も感じなかった。
しかし、早く終わってほしいとも思わないし、むしろ楽しんでいる自分がいた。
時刻は18時過ぎ。
使って良いと言われた8畳の部屋の片付けを終えたゆうりが再びリビングに戻ると大分綺麗に片付いていて、沈みそうな太陽が床を照らしていた。
「拭き掃除終わりました?」
「うん。あとキッチンのところ拭いたら終わり」
郡司は慣れた手付きでキッチンの床を拭き始めた。
5時間近くやっていれば手慣れたもんだ。
リビングの隣の部屋を見ると、ベッドの下に落ちていた衣類は綺麗に片付けられ、ベッドのシーツなども整えられていた。
ふと、あの夜の光景が思い出された。
白いシーツに寝転び、自分を呼ぶ郡司の姿…。
あぁ…ダメだ、何考えてるんだろ。
衝撃的過ぎて頭から離れないんだろうな。
「花村」
「はい?!」
郡司は「終わったよ」と言った。
振り返ると、あの汚部屋とは思えないほどに綺麗に片付いていた。
ゴミや物で溢れ返っていたから分からなかったが、この家のリビングは相当広い。
一体何畳あるのだろうか。
これからはあんな風にならないように、綺麗を保ち続けなければ。
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