4.真夏の約束とお片付け

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「いいんですか、ビールまで」 「うん、打ち上げってことで」 「ありがとうございます。てか、郡司さん飲めないのになんで2本も頼んだんですか?」 「1人で飲むのもアレかなぁ…って思って。半分くらいなら大丈夫だと思う。家だしすぐ寝れるし」 「はは、寝る気満々じゃないですか」 「私飲むとすぐ眠くなっちゃうんだよね」 「すごかったですもんね、歓迎会の日。あの日何杯飲んだんですか?」 「1杯だけだよ」 「じゃあ今日もヤバいじゃないですか」 「だから、家だからいいの」 郡司は涼しい目をしてそう言った。 30分後。 ピカピカになった白い丸いダイニングテーブルで、郡司と向かい合ってピザを頬張る。 郡司の家で、郡司と2人でピザを食べているだなんて。 病棟の誰もが想像できない状況だろう。 ゆうりはビールをひと口飲んだ後、郡司をチラリと見た。 まだ数口しかビールを飲んでいないはずなのに、すでに耳が真っ赤だ。 顔もほんのり赤くなっている。 本当に全然飲めないんだな。 夜勤明けだから尚更だろう。 「郡司さん?」 「ふん?」 目もちょっぴりトロンとしている。 郡司は口をモグモグと動かしながらゆうりを見つめた。 口の動かし方が小動物にしか見えない。 「顔赤いですよ。もうやめといた方がいいんじゃないですか?」 「ん…半分は飲む」 気を遣ってくれているのだろうか。 お酒に弱いのも大変だ。 「絶対半分でやめてくださいね」 「分かってるよ」 会話もほどほどに、ピザを食べ終わる頃には郡司の顔はおろか、首まで赤くなっていた。 意外と気を遣う人だから、この間も飲み過ぎてしまったのだろうか。 ゆうりは残ったビールを一気に飲み干すと、ポーッとしている郡司の手から缶ビールを取り上げた。
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