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「あ…」
「あ、じゃないです。わたしもう飲み終わったんで、大丈夫ですよ」
郡司は両手で顔を覆うと「はい…」と言った。
「明けでこの時間まで起きてて飲んだから、酔い回るの早かったのかもですね…もう寝ましょ。ベッドまで歩けますか?」
「歩ける…」
立ち上がった郡司は潤んだ目でゆうりを見つめると「ごめん」と呟いた。
眠そうな郡司を支えベッドに辿り着くと、郡司はベッドにドサリと倒れ込んだ。
「付き合ってくれてありがとうございました。…じゃ、帰りますね、郡司さん」
「ん…」
今にも閉じそうな目をした郡司に、ゆうりは「おやすみなさい」と言って頭を下げた。
んふふ…と微笑んだ郡司を見て、ゆうりも微笑んだ。
頼んだピザのゴミやら缶やらなんやらを片付けて、家を出る頃には郡司はポカンと口を開けて熟睡していた。
可愛いところもあるんだなぁ。
ゆうりは「お邪魔しましたー…」と小声で呟くと、リビングの電気を消して玄関に向かい、靴を履いてドアを閉めた。
あ……。
鍵ないけど大丈夫か?
ゆうりは心配になり、家の中に入って鍵を閉めた。
さすがに夜中にずっと鍵を開けっぱなしなのはやばい。
ゆうりは靴を脱いでリビングに向かうと、グレーのキルティングソファーに横になって目を閉じた。
明日は普通に日勤だけど、今日は家に帰るのは断念しなければ。
鍵を開けっぱなしにするのは危険だ。
明日は郡司は休みだ。
家を出る前に声を掛けよう。
あれこれ考えていたら、気付いたら夢の中にいた。
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