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7月1日。
8時を過ぎた頃、郡司のマンションにゆうりの荷物が届き始めた。
郡司は夜勤明けで家にいないが、早朝で安いならと許可をもらったのだ。
ちなみに数日前に合鍵も作ってある。
あれこれ運んでくれている引越し業者の人に「こっちの部屋でお願いします」と廊下から繋がる8畳の部屋にどんどん運んでもらう。
キッチンに置いていたコーヒーミルやお気に入りのマグカップは、キッチンにそのまま置いてもらうことにした。
どこにしまって良いのか分からなかったから。
引越し業者の人たちが帰ったのは9時ちょっと過ぎ。
広い家にポツンと残されたゆうりはどうしたらいいか分からなくて、自分のものとして使っていいと言われた部屋に入って黙々と荷物の整理を始めた。
無心で荷物の整理を続けること…何時間だろう…。
玄関でガチャリと音がした。
ドアを開けると郡司が玄関で靴を脱いで廊下に一歩踏み出したところだった。
いつもと同様、夜勤明けとは思えない綺麗な顔でゆうりを見据えた。
「あ…。おかえり…なさい」
「あ、今日だっけ…」
郡司は、透き通るひんやりとした声でそう言うと、ゆうりの目の前を通り過ぎてリビングに入って行った。
キッチンには自分の物がたくさんある。
慌ててキッチンに向かい「これっ…!ここでも使っていいですか?!」とゆうりが言うと、郡司は不思議そうな目をした。
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