1.お世話係

7/20

51人が本棚に入れています
本棚に追加
/57ページ
忘れていた。 今日は新人歓迎会だった。 4月に開催予定だったのが、何故か今月にズレてしまったのだ。 課題の提出期限が近いのに、何で今月なんだよと幹事を恨みたくなる。 ていうか今日の歓迎会とか園田は絶対郡司と喋りたくないだろうな、とどうでもいい想像をしながらゆうりは点滴台をガラガラと引いて杉田さんの元へと向かった。 杉田さんに点滴を挿れ終えた後、ゆうりは清潔ケアから戻ってきた園田にそのことを伝えた。 「えっ…すみません…」 園田は使い捨てのエプロンを付けたまま病室から出てきていた。 これもアウトだ。 ゆうりは誰かの目につく前に、園田のエプロンの首元をちぎって外し、急いで丸めた。 「あ、す、すみません」 「杉田さんの場合ただのルートキープだったけど、重要な点滴だったらヤバいからね。なんでそうなっちゃったのか後でわたしに教えてね」 「はい…」 「それと、課題の提出のスケジュールちゃんと把握してる?郡司さんにも見てもらわないといけないんだよ?」 「あっ…」 園田は"すっかり忘れていた"という顔をした。 朝だというのに、腫れぼったい目とぐちゃぐちゃなお団子。 入職当初は少しぽっちゃり体型だったその身体は、今では普通体型だ。 頑張っているのは分かるけど、空回りばかり。 慣れない環境で分からないことだらけで、それでも日々業務に追われ、ミスして怒られて泣きそうになるけど患者さんには辛い顔なんて見せられなくて…。 新人の頃は本当に辛いのだ。 そんな中スケジュール管理なんて無理だ。 無理なのだけど、やらなければならない。 みんなが乗り越えてきた道なのだけど、要領の悪さだけはどうにもならないので、誰よりも苦労するだろう。 園田は新人の頃の自分とそっくりだ、とゆうりはいつも思っていた。 だから園田の気持ちがよく分かる。 分かるのだけど、やらなければならない。 結局最後はその答えに辿り着く。
/57ページ

最初のコメントを投稿しよう!

51人が本棚に入れています
本棚に追加