1.お世話係

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「どうしよう…」 オロオロする園田。 「郡司さんまだ夜勤明けでいるから声掛けて。今日花村さんに渡すから、見てほしいですって」 「はい…」 泣き出しそうな顔でそう言った園田は、ケアで使ったボトルを汚物室に片付けに行った後、ナースステーションの奥に並んでいるパソコンで仕事する郡司の元へと向かった。 朝から色々あって自分の受け持ちのラウンドも終わっていなかったゆうりは、ため息をつきながら担当患者のベッドサイドに向かった。 ラウンドが終わったのは11時が過ぎた頃。 ここ最近では一番遅い終わりだ。 仁藤に午前の報告を終え、忙し過ぎて誰も手をつけられない点滴の確認をしようと薬カートの中から点滴を取り出していると、頭にボンと何か置かれる感触がした。 振り返ると、郡司が「園田が言いに来たんだけどさ」と、夜勤明けとは思えない綺麗な目を向けていた。 チラリと見た手の先にはクリアファイルに入った資料。 「どう考えても期限間に合わないから、今回は花村のチェックは飛ばして直接私がもらったから。なんか花村に見てもらってどうとか色々言ってたんだけど、ホントマジで何言ってるか分かんなかったんだけど。とりあえず預かったから」 「え、これ課題ですか?」 ゆうりはファイルを見ながら言った。 「そう」 「すみません…」 「花村に謝られても困るんだけど。ちゃんとスケジュール管理するように言っといて」 「…はい」 郡司は「じゃ、おつかれ」と言って去って行った。 結果オーライと言えばそうなのだが、後味が悪すぎる。 一体、園田は郡司に何と言ったのだろうか。 怖気付いて上手く言えなかったのかな。 なんか、胃が痛くなってきた。 まだプリセプターになって1ヶ月なのに…。 先が思いやられる。
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